「ダウンフェザー割合」は、ダウン(羽毛の綿毛)とフェザー(羽根軸のある羽)の配合比を示す指標です。
一般に「ダウン90/フェザー10」のように表記され、同じ重量でも、ダウンが多いほど軽くて暖かく、フェザーが多いほど張りや復元力が増す傾向があります。
ただし、暖かさは割合だけでなく、フィルパワー(かさ高)や充填量、設計(キルト構造・生地・防風性)との掛け算で決まります。
ダウンとフェザーの役割をまず理解する
ダウンは球状の綿毛で多くの空気を抱え込み、軽さと保温力に直結します。
フェザーは軸と小枝を持ち、型崩れを抑えてボリュームの復元を助けますが、重さと硬さが増しやすく、チクツキ感や「抜け羽」のリスクも相対的に上がります。
用途によって理想の配合は変わるため、シーンを決めてから割合を見るのが近道です。
役割のちがいを一目で
| 素材 | 強み | 弱み | 向く用途 |
|---|---|---|---|
| ダウン | 軽量/高断熱/圧縮性 | 濡れに弱い/価格が上がりやすい | 真冬アウター/高性能寝具 |
| フェザー | 反発/型持ち/耐久支え | 重さ/チクツキ/抜けやすさ | 枕/クッション性重視の中間層 |
ダウンは「空気を抱える担当」、フェザーは「骨格と反発の担当」と覚えると選びやすくなります。
代表的なダウンフェザー割合と体感の目安
同じブランドや商品でも設計で差が出ますが、割合ごとの大まかな体感は次のとおりです。
迷ったら、割合だけを見ずに「フィルパワー(FP)」「総充填量(g)」「表地の防風・撥水性」も必ずセットで確認しましょう。
割合別の特徴早見表
| 割合(ダウン/フェザー) | 保温と軽さ | 反発と型持ち | 想定シーンの例 |
|---|---|---|---|
| 95/5 | 最高クラスの軽暖性 | やや繊細/潰れやすい | 高級羽毛布団/軽量山岳ダウン |
| 90/10 | 非常に暖かい/軽い | 十分な反発/日常〜寒冷地 | 本格ダウンアウター/上位寝具 |
| 85/15 | 暖かい/やや軽い | 型持ち良好/汎用性高い | 街着ダウン/通年寝具 |
| 80/20 | 中〜高い保温 | 反発強め/耐久寄り | アウトドア入門/コスパ重視 |
| 70/30 | 中程度の保温 | 張り強い/やや重い | ライトアウター/枕・クッション |
一般的に「90/10 or 80/20」がバランス型、寝具は「90/10〜85/15」、枕は「フェザー比高め」が定番です。
割合だけでは決まらない「暖かさの正体」
ダウン率が高いほど同重量で暖かくなりやすいのは事実です。
しかし、体が感じる暖かさは以下の式で近似できます。
体感保温 ≈ フィルパワー × 充填量 ×(ダウン率の寄与) × 設計(防風・キルト・フィット)
つまり、ダウン90/10でもFPが低く充填量が少なければ物足りず、80/20でもFPと総量、風の侵入対策が優れれば十分暖かく感じます。
一緒に見るべき仕様
- フィルパワー(FP):数値が高いほどかさ高。700FP以上で高性能域。
- 充填量(g):同じFPでも量が少ないと薄手になる。
- 表地/裏地:防風性・通気バランス・撥水コートの有無。
- キルト構造:コールドスポットを減らす箱マチ/シェイプ設計。
- フィット:裾・袖・フードの遮風(ドローコード/リブ)。
割合=素材の質、FP=素材の性能、充填量=量、設計=環境対策、と役割を分けてチェックすると失敗が減ります。
用途別:どの割合を選ぶ?
行動量・気温・濡れリスクで最適は変わります。
「過剰スペックは重さと蒸れ」になるため、実際の場面から逆算しましょう。
アウター(街・通勤)
- 温暖〜中寒:80/20 × 650–700FP × 充填量中くらい。
- 寒冷地・朝夜長時間:85/15〜90/10 × 700FP以上 × 防風強め。
- 雨雪が多い:割合は据え置き、表地の撥水・防風を優先。
街では風対策と着脱しやすさが満足度を左右します。
登山・アウトドア(停滞時防寒)
- 軽量重視:90/10〜95/5 × 高FP × 充填量は用途最小限。
- タフさ重視:85/15〜90/10 × 表地は強度高め。
行動中は化繊中綿、停滞時に高ダウン率を重ねる運用が現実的です。
寝具(掛け布団)
- 本掛け(冬):90/10 × 700FP以上 × 充填量しっかり。
- 合掛け/肌掛け:85/15 × 600–700FP × 軽量側。
- 枕:フェザー比高め(例:ダウン20/フェザー80)が反発を出しやすい。
寝具は「比率+生地の軽さ+キルト」で体温調節が決まります。
フェザーが多い=悪いではない
フェザーは骨格と反発を支える材料です。
比率を少し上げることで、圧縮・持ち運び・着用の耐久が上がることもあります。
一方で、チクチク感や抜け羽を減らすためには、生地のダウンプルーフ性(目詰め)や裏地の選択も重要です。
こんなときはフェザー多めも有効
- リュックを背負う・座圧がかかる(潰れ戻りが欲しい)。
- 日中の着用時間が長く、ヘタリにくさを取りたい。
- 枕やクッションで反発と通気を重視したい。
「抜けが気になる」なら比率よりも生地グレードと縫製密度を要確認です。
ラベルの読み方と購入時チェック
国・製品ごとに表記は異なりますが、次の点を揃えると比較が簡単です。
店頭・ECでの確認リスト
- ダウン/フェザー割合(例:90/10)。
- フィルパワー(数値/測定基準の明記)。
- 充填量(g)とサイズ別の差。
- キルト構造(箱マチ/縫い合わせ)。
- 表地スペック(防風・撥水・ダウンプルーフ)。
- 洗濯・ケア表示(家庭洗濯可否/乾燥機可否)。
- 産地や認証(RDS等の動物福祉認証があるか)。
数字は「単体」ではなく「セット」で比較すると納得感が増します。
ケアで体感は大きく変わる
高い割合やFPでも、湿気や皮脂が残るとロフトは沈みます。
定期的な乾燥と点在汚れの早期ケア、正しい保管で「本来の性能」を保ちましょう。
日常ケアのコツ
- 使用後は風通しの良い場所で乾かす(湿気抜き)。
- 部分汚れは中性洗剤で局所ケア、強い揉み洗いは避ける。
- 乾燥機OKなら低〜中温で清潔なテニスボールを入れてロフト回復。
- 長期保管は圧縮NG、通気カバー+広いハンガーで。
「乾かす・ほぐす・圧を避ける」の3点がダウンの正解です。
迷ったときの決め方(3ステップ)
最後に、短時間で結論を出すための手順を示します。
ステップ1:用途と気温を固定
- 最寒期の行動/停滞のどちらに合わせるか。
- 屋外滞在時間と風・濡れの頻度。
ステップ2:仕様を「束」で比較
- 割合(例:90/10)× FP(例:700)× 充填量(g)。
- 表地の防風・撥水、キルト、フィットの有無。
ステップ3:試着/体感で微調整
- 肩・首・裾の密閉感(コールドスポット対策)。
- 動きやすさと蒸れ(オーバースペックを避ける)。
スペックで候補を絞り、体感で最終調整するのがもっとも合理的です。
まとめ:ダウンフェザー割合は「入口」
ダウンフェザー割合は性能の入口であり、最終的な暖かさは「FP・充填量・設計・フィット」との総合力で決まります。
街用なら80/20〜90/10、山用や高性能寝具なら90/10以上を起点に、用途と気候から逆算して選びましょう。
ケアと保管を整えれば、どの割合でも本来の実力を長く引き出せます。
